沿岸地形には荒々しい岩礁地帯もあれば波穏やかな砂浜も存在します。
浜の真ん中に立って「なぜサーフになっているのか?」
という疑問を持った時、その答えを瞬時に説明できますか?
流れ込みや離岸流といった極小地形だけの把握にとどまっていると「木を見て森を見ず」で、釣り場を見誤り満足のいく結果が出ないのではないかと私は考えています。
そもそも論として、サーフの形成要因について考えてみましょう。
サーフの砂粒はどこからきたのか?
サーフを構成する粒の由来には大きく3種類があります。
①川から流れてきた土砂
砂粒の多くは川から運ばれてきています。
その証拠に、大規模な砂浜や砂丘の付近には必ずと言っていいほど河川が流れ出ています。
②海岸近くの陸地からそのまま流れ出たもの
海に接する部分は、常に波や潮流の浸食を受けています。
この力を受けて欠けたり崩れたりした陸地部分が細分化し、やがて堆積します。
③死んだサンゴや貝殻の欠片
貝の欠片は分解されず砂浜の一部を形成します。
また沖縄など亜熱帯に属する地方では、砂浜の中にサンゴの死骸の成分が含まれています。こうしたサーフは白みが強いのが特徴です。
サーフのできる場所とできない場所
ではどんな場所でサーフができるのか? という疑問です。
ニュース番組なんかで「日本の砂浜が消えている」という話を聞いたことはあるでしょうか?
河川工事や砂防ダムの設置が進み川から流れ出る土砂が減少したことで、浜へ流入する砂より出ていく砂の方が多くなり、浜の面積が減っているのです。対策として養浜事業をして砂を継ぎ足している浜もあるほどです。
実はこの話こそ「サーフができる場所」のヒントになります。
砂でできた浜というのは 流入する砂 > 出ていく砂 が成立する場所でしか発達しません。
真正面から強い潮流を受けるような場所では、砂は海水にもっていかれますので、広大な砂浜が出来上がることがないのです。これは非常に大切な考え方ですのでぜひ覚えてください。
逆を言えば砂浜ができる場所はあまり正面から潮流を受けていないと言えます。
具体的には記事後半の サーフの形成パターン をご覧ください。
サーフに見られる代表的な地形
ここからはサーフに特異的な地形を紹介します。全部やると私の1日が終わってしまうため、釣りに関係の深い地形のみの掲載です。笑
・沿岸州(バー)
浜辺からほど近い海中にある砂でできた凸の部分です。元々浜辺に堆積していた砂が、波浪によって浸食されると沖側へ移動し沿岸洲を形成します。しかし波が穏やかになると再び岸側へ移動していきます。このため沿岸洲はたびたび場所を変えるのです。
・トラフ
岸と沿岸洲の間の凹部分です。波が穏やかな日が続く場合、沿岸洲が岸と一体化するためトラフは消失します。

↑沿岸洲とトラフ。ほど良い砂浜が近くになかったのでフリー画像を使用。泣
・カスプ
サーフの岸辺において、湾と岬が連続するようになっている地形。離岸流を見つける際のヒントになります。離岸流の記事はこちら

↑砂利浜に形成されたカスプ地形。
砂浜と礫浜
サーフには細かな砂を主体とする砂浜と、粒の大きい砂利に覆われた礫浜があります。
(後者は釣り人の方にとっては「砂利浜」という呼び方の方が馴染みがあるかもしれません。)
同じサーフでも粒度に違いがあるのはなぜでしょうか?
その答えは先ほどの 流入する砂 と 出ていく砂 の箇所にあります。
砂利のような重たい石が海中で動くことは稀です。何メートルも動かされるのは波浪警報が出ている日の大波くらいです。
それに対し砂はありふれた波や潮流によって巻き上がり、移動します。
流入する砂 < 出ていく砂 という条件の場所で砂浜はできません。つまり砂利浜とは、砂利が堆積しており かつ 流入する砂 < 出ていく砂 となる潮流があるサーフなのです。
砂利はあまり動きませんので、砂利が流されてきたというだけでなく、砂利ばかりが残されているというイメージを持ってください。
また、固い陸地も浸食されれば徐々にすり減り崖のようになります。こういった場所の近くは磯や俗に言うゴロタ浜です。よって砂利浜は中間条件の海岸ともいえるでしょう。

サーフの形成パターン① 沿岸流
大きな河川の河口近くや大規模サーフの大半がこれに該当します。
冒頭で「砂浜ができる場所はあまり正面から潮流を受けていない」という話をしました。
大規模サーフなどの沖合では、横向きの沿岸流が流れています。沖にある支配的な潮流です。河口から流れ出た土砂がこの沿岸流に乗っかり、やがて流れから離れサーフへと堆積していくのです。
このパターンのサーフに押し寄せる波は、多くが沿岸流の波紋です。波の根源が横向きの沿岸流であると知っていれば、ポイント選択のヒントになるでしょう。
なお黒潮などの影響で強い沿岸流のある地域は、沿岸流によって砂よりも粒の大きい土が流され、砂利浜が形成されているケースもあります。
サーフの形成パターン② 河口
河口本体もサーフを形成します。
海へ出たすぐの箇所、左岸か右岸かあるいは両側に形成されます。
大河川ともなると粒径の小さな砂ばかりが分布し、魚影も濃く攻略しやすいです。
小さな流れ込みのレベルでもサーフはできますが、それが急流の場合は粒の大きい石を運んできて、結果的に砂利浜の様相になることもあります。
サーフの形成パターン③ 砂州やトンボロの形成
潮流が何らかの障害物にぶつかることで流れを変えると、砂州やトンボロができることがあります。
砂州は天橋立や浜名湖、トンボロは函館や串本が知られ、名高い観光地になっていますね。
こうしたサーフは砂の流入が続くため遠浅になるケースがほとんどです。
釣りのスポットというより観光地や海水浴場として有益に利用されがちです。
サーフの形成パターン④ 岬地形
細い半島、つまり岬のような地形では、側面を縁取るように幅の狭いサーフが散在します。
これは潮流が岬にぶつかることで、周縁を沿うように流れていくためです。つまり形成パターン①の沿岸流が岬の周囲に流れているのです。
一見すると潮の通りがよく水深もあるサーフになるため、有望なポイントになりそうです。しかし岬自体が固い岩礁でできた地形ですから、よほど砂が堆積でもしていない限り根掛かりに悩まされることになるでしょう。
サーフの形成パターン⑤ 人工構造物
漁港の堤防の四隅に小さいサーフができているのを見たことがないですか?
あれは流されてきた砂が堤防にぶつかり、流れを止めて堆積したものです。
漁港に限らず離岸堤などによっても人工的に砂浜は形成されます。
多くの釣り人は堤防をフィールドにしているでしょうから、投げ釣り師にとっては穴場的なスポットでもあります。
おわりに
サーフの形成過程を知れば自ずと地形を読めるようになります。地形の把握はサーフの釣りにとって生命線です。浜の様子から釣りの作戦を立てられるようになると、プロ感が出ますよ。